【北海道クラブマンカップレース第2戦】
場所:十勝スピードウェイ
日:2017年7月30日(日)
天候:晴
参戦クラス:ザウルスJr.
Team:十勝レーシングスクールJr.
参加台数不足により急遽参戦決定!
北海道クラブマンカップレースには、核となるカテゴリとして「VITA-01」と「ザウルスJr.」の2クラスが存在している。
「VITA-01」
「ザウルスJr.」
格上のマシンであるVITA-01の参加台数が増加傾向にある中、これまで北海道クラブマンカップレースの代名詞的存在であったザウルスJr.は時代の流れとともに参加台数が減少している。
レース成立には3台以上の参加が必要なのだが、レース開催2週間前の時点で2台しかエントリーがないという状況だった。
そんな時、いつもお世話になっている十勝レーシングスクールチームから「ザウルスJr.レースに出てもらいたい」というお話を頂いた。
「出てもらいたい」とお話を頂いたとしても、私のようなアマチュアドライバーはレースに出るためにはチームにお金を払わなければならない。
今シーズンはレース費用の工面ができず参戦を見送っている状況なだけに、このお話を断るつもりだった。
しかし、ザウルスJr.に参戦しているうちの1台は、今年からレース参戦を開始した若手新鋭の大学生ドライバー「阿部晃太」選手である。
私は彼が高校生の頃から知っており、彼のレース参戦に対する並々ならぬ情熱も知っていた。
アルバイトで必死に資金を集めて活動していることを知っているだけに、彼の努力を無駄にしないためにもなんとしてでもザウルスJr.のレースを成立させる必要がある。
これからの北海道のモータースポーツ界を担う若手ドライバーの芽を摘むことだけは許されない!
金銭面にしても時間にしても全てが足りない状況ではあったが、ここは無理をしてでも出場しなければならない場面だと判断し、妻や娘(10ヶ月)の理解もあり出場を決意した次第である。
1年半ぶり、そして初めてのマシン。
2015年にザウルスJr.のシリーズチャンピオンを獲得して以来、1年半ぶりにザウルスJr.をドライブすることとなった。しかも、その時とは違うマシンである。
ワンメイクレースであるため同じ仕様ではあるが、マシンの個体差というものはどうしても発生してしまう。レースまでにマシンの特徴やクセを掴むことが重要だ。
与えられた時間は70分間
レースに参加するほとんどの人は、レースウィーク以前に練習をし、マシンの感触を確認している。
しかし、資金に余裕がないことと急遽決まった話であることから、レース前日の公式練習日しか練習ができない。25分間×2本、20分間×1本の計70分間のうちにマシンを戦える状態に持っていかなければならない。
1本目の走行では、スピードに対する目と体の慣らしが主目的。その中で、マシンのバランスも見ていく。
案の定、チャンピオンを獲得した時のマシンとは似て非なる状態だった。
とんでもないオーバーステアで、運転していて恐怖すら感じる。
走行終了数分前、最終コーナー立ち上がりで挙動を乱しスピン、コースオフ。赤旗中断となりそのままセッション終了。貴重な練習時間を終了させてしまい、他の参加者に迷惑をかけてしまった。
ピットに戻ると同時に他チームに謝罪をして回った。
チーム監督にマシンの状態を説明し、2本目に向けてセットを変更した。
2本目の走行では、オーバーステアが解消され安心して運転できるようになった。ある程度セットの方向性が見えてきたところで、翌日の予選に向けてセットを詰めていく。時間も限られているためタイヤのエア圧を決めていきたいのだが、ラップタイムを見ても38秒台しか出ていなく(予定では36秒後半~37秒前半)、タイヤを使えている感じはない。そのためか、内圧が思うように上がらず予選に向けたセット決めが思うように進まない。
残された時間は3本目の20分間。ここで決めなければ、明日の予選は厳しいものとなる。
気合を入れてコースインしタイヤの熱入りを意識しながら走行。しかし、VITA-01がガードレールにヒットするクラッシュを起こしてしまい赤旗中断。残り10分を残しセッションは終了となってしまった。
結局、70分間という時間でセットを決めることができなかった。
【予選】20分間の鬩ぎ合い
今回の大会は「TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race」が併催されているため、予選スタート時間が午前8時と早い時間に設定された。
前日の練習でセットを決めきれなかったが、気温や路面状態など現時点でのコンディションからセットを推測。やれることをやるしかない!
最初の10分は確実に予選タイムを残しつつタイヤに熱入れ。感覚としては、昨日よりタイヤを使うことができている。推測で設定したセットが決まっている感じだ。タイムも37秒台前半に入ってきている。
13分が過ぎた頃にピットイン!クルーに内圧をチェックしてもらうと、昨日より熱入れがうまくいっている。希望の内圧にセットしてもらい、最後のアタックに入った。
残り5分だと、アタックできるのはがんばっても3Lap程度。その間にクリアラップが取れなければアタックすらできない。
マシンの状態からすると、単独走行でタイムを出すことは難しいと判断。他車のスリップを使いながらタイムを出す作戦にして、タイミングを合わせて一発勝負!
結果:予選2位 1分37秒099
ポールポジションは阿部晃太選手(1分36秒842)
悔しい結果ではあるが、マシンコンディションや準備時間を考えると監督もOKと言ってくれたのでよしとして、決勝に向け気持ちを切り替えていく。
【決勝】大波乱!?激闘を制したのは?!
12Lapで争われる決勝レース。スタート時刻は気温上昇中の午前10:21。
今回は激しいバトルになることを予想し、マシンセットを最終調整しグリッドに着いた。
フォーメーションラップから再度グリッドに着き、レッドシグナル→ブラックアウトでスタート!
ポールスタートの阿部選手もスタートダッシュを決めたが、シフトミスをしたのか急激にペースを落とし、難なくトップを奪取した。
1コーナーでVITAの1台がスピンしそこに別のVITAがクラッシュしてしまい、コース上にマシンがストップ。そのことでSC(セーフティカー)導入となった。
ドライバーは「SCボード」と「イエローフラッグ」が各ポストから掲示されると、他車の追い越し禁止となり、適度に減速しSCに追いついた時点で隊列走行をしなければならない。
つまりは、確実に安全が確保できる状態で周回をしなければならない。
ところが、これらの掲示の見落としていたのか私がSCの隊列に続いていると、後ろからフルスピードで走ってきたマシンが追突してきた。6点式のシートベルトとHANSを通じてガツンと衝撃を感じた。
レースは赤旗中断となり、再度グリッドに着くこととなった。
この時点で、私のマシンにはダメージが発生していた。マフラーが押しつぶされエキゾーストパイプが屈曲、さらにエキゾーストパイプの中間部が割れており排気漏れの状態。
幸いにも、煙や油漏れといった症状が無いためそのままレースを続行することにした。
レースは継続となり、4周減算の8Lapで行われることとなった。SC先導でのスタートとなり、そのままローリング方式でのスタートが切られた。
先ほどの追突の影響か、スピードが遅い。特にストレートでは勝負にならない。
ストレートで抜くことができないのであれば、相手の弱点を見つけそこを攻めていくしかない!
トップで走っていたかと思いきや、
次の周には抜かれている。といった展開。
どうしてもストレートでは追いつかれてしまい、1コーナー進入で勝負をすることが難しい。
抜かれても引き離されないようにがんばり、とにかくミスをしないことに徹した。
8Lapのレースは終始サイドバイサイド、テールtoノーズのバトルを繰り広げた。
途中、16号車にはペナルティが発出されたことにより、実質のトップ争いは私と阿部選手に絞られた。
お互いの技量を把握し、信頼できているからこそできるギリギリのバトル。
バトル経験が浅いはずの阿部選手だが、素晴らしいバトルを展開してくれた!
マシントラブルもあり、どうしてもストレートで追いつかれてしまう苦しい展開。
ファイナルラップの時点で阿部選手がトップを走っていた。このままいけば、阿部選手の初優勝となる。
しかし、レースと言うのは最後の最後チェッカーを受ける瞬間まで何が起こるか分からない。
チェッカーまで残り2ターンを残した第8コーナーで阿部選手が痛恨のコースオフ!
その横をすり抜け、トップチェカー!
スポット参戦、マシントラブルという悪条件であったが、どうにか優勝することができた。
優勝するとPRESSから写真撮影を依頼される。恥ずかしいが嬉しい瞬間だ。
シャンパンファイト!(スパークリングジュース)
しかし、参加台数が3台だったため規定により表彰対象は優勝者のみということで、少し寂しい画となってしまった。
●レース結果(ザウルスJr.)●
優勝:No.26 鬼塚 益生 十勝レーシングスクールJr.
2位:No.135 阿部 晃太 トバコスレーシング Zn Jr.
3位:No.16 五十嵐 弘昌 さくらJr.
レース後、阿部選手のコメント
【No.135 阿部 晃太 トバコスレーシング Zn Jr.】
悔しいよりも楽しかった方が勝っています。
あんなに接近戦をできたのも、タイヤのことを考えてレースをしたのもこれが初めてでレースの面白さを、自分の経験で感じることができました。
参加台数が少ないザウルスJrですが、まだまだドライバーは闘います。皆さん是非、レース入門でザウルスJrに乗ってみてはいかがでしょうか?
最後になりますが
本当に楽しいレースを共に作り上げてくれた鬼塚さん心から感謝します。
同じ舞台で闘うことがひとつの夢だったのでレース終了後は胸が熱くなりました。
そして、なにより親に感謝です。
また皆さんも本当にありがとうございました!
次戦9/24は優勝します。
安全が脅かされてはならない!
今回のレースにおいて、十勝のレースレベルの低さが露呈してしまったように感じてしまった。
ドライバーは、フラッグやボードを確実に確認しなければならない!
オフィシャルが掲示したことには従わなければ、最悪大事故につながりかねない。
現に、他車に追突したりたり、スピンしたり、ペナルティボードを見落としていたりするドライバーがあまりにも多すぎた。
「見落としていた」「勘違いしていた」というのはあってはならない。
レースをする、モータースポーツに参加する者は、まずはルールを認識し守ることが最低条件である。
運営側にも問題あったように思える。
ペナルティを掲示したにも関わらず、それらが結果に反映されていない件がいくつもあった。
審議、再審議、再々審議・・と、参加側からすれば「本当にこの運営者は大丈夫なのか?」と信頼がおけなくなる。
運営側も参加者も、私も含めて今回のレースを教訓にする必要がある。
アマチュアレースとはいえ、時速200km近いスピードで争うわけだ。
安全が脅かされることがあってはならない。
母に捧げる勝利
レースの2週間前、21年間にわたり闘病していた私の母が62歳でこの世を去った。
連絡を受けた時は死亡が確認された後だったが、急遽福岡に飛んで帰った。
以前より覚悟をしていたことではあったが、予想より早い結末にすぐに理解ができなかった。
万全の状態でレースに挑めるのか?
全力で挑まなければ、ライバルに失礼ではないのか?
出場を辞退すべきではないか?
と自問自答した。
しかし、母が亡くなったことで気持ちが落ち着かないため出場を辞退する。とした場合、
それは母のせいにしてしまうことになる。
北海道に移住した理由を理解してくれていた母のためにも、全力を尽くさなければならない想いで出場した。
今回の出場条件や、混乱の中でマシントラブルを抱えていたこともあり、優勝できるとは本当に思っていなかった。しかし、レースは諦めた時点で負けだ。チェッカーを受ける最後の最後まで諦めなかったものが勝つ。今回はその通りとなった。
母が21年間の長きにわたり病気と闘ったことに比べれば、私の闘いなど小さなものにすぎない。
何事にも全力で挑むことを誓い、今回の勝利を母に捧げる。
ありがとう、母ちゃん。