「鉄道は無くなっても立ち食い駅そばは健在!旧静内駅でえび天そばを食べてみた」-マスオ。の、リアル孤独のグルメシリーズ!Vol.19-
旅好きライターマスオ。が、北海道グルメを探して歩くリアル孤独のグルメシリーズ第19弾!今回のお店はいつにも増して情緒あります!
列車は来ない。それでも歴史は続く「駅そば」
北海道の日高地方を訪れると、ちょっと寂しい気持ちになってしまう。
数多くのサラブレットを生み出している日本有数の地域であり、鵡川は“本物の”ししゃもが獲れることでも有名。太平洋沿岸の風光明媚な素敵な土地ではあるのだが、バスの車窓に映る錆びついた線路を見ると寂しさを隠すことはできない。
この地域で何が起きたのか、ちょっと整理してみよう。
JR北海道の日高本線。かつてこの路線は苫小牧と様似を結ぶ全長146.5 kmの長大路線であった。発端は王子製紙の関連会社であった苫小牧軽便鉄道(1913年(大正2年)10月1日開業)であることからも、製紙業に関する木材輸送を目的として敷設された路線であった。その後、国有化された上で日高地方の物資・人々の生活の足として長きにわたり運行されてきた。海沿いを走る路線であることからも、雄大な太平洋を望む車窓を楽しむことができる魅力あふれる路線であった。
しかし、2015年。この路線の運命を決定づける出来事が起きる。
台風等による高波・高潮により、路線の護岸が破壊され路盤が流出。線路が宙に浮いてしまう状態になってしまった。復旧には数億円かかる見込みとなり、復旧か存続かを協議している間にもまたしても自然災害の影響を受け、復旧は絶望的となった。その結果、JR北海道と自治体との協議の上、全線の8割に当たる116キロメートルにあたる鵡川~様似間が2021年4月1日に鉄道事業が廃止され、正式にバス転換された。
昨年の4月、このような出来事が起きていたのだ。
旅好き、鉄道好きとしてこんなに悲しいことはない。そんな思いを胸に、私はいま代行バス・・・いや、“転換”バスに揺られている。
バスで移動していると、何もしていないのに腹だけは減ってくる。通り過ぎていく「食堂」「ラーメン」「レストラン」という文字が私を呼んでいるようだ。
しかし、安易に途中下車してしまうと後続のバスが数時間後となってしまうこともある地域だ。まずは目的地を目指そう。そこに、私の大好きなものが待ってくれていることも分かっているからな。
鵡川駅からバスで1時間半。静内に到着だ。
ここは、かつての静内駅。鉄道が廃止になった今でも、静内駅としてそのまま残っており、駅の中も変わっていない。変わったことといえば、駅としての機能が失われたこと。これだけだ。
この静内駅には私の大好きな食べ物屋さんがある。それは「立ち食いそば」だ。「駅そば」とも言えるのだが、ここは駅ではなくなったため駅そばとは言えない。しかし、私は変わらず駅そばと思っていたい。駅でないのに駅そば。立ち食いソバ。駅の立ち食いソバ。・・・そんなことはどうでもいい。私は今、モーレツに腹が減っているんだ。腹が減りすぎて頭の中で駅そば議論が起きてしまった。
いつもは「かけそば」だが、今回は奮発の「えび天そば」
立ち食いそばはシンプルイズベスト。それが私のモットーだが、鉄道で来ることができなくなってしまったこの場所に訪れるのはいつになるのか...そう思うと、少し奮発してみようじゃないか。
贅沢の極み「えび天そば¥530」ください。
カウンターの中にいるおばちゃんが手際よくつくっていく。1分もかかっただろうか、あっというまに私の目の前にえび天そばが出てきた。いただきます。
こんな感じのえび天は初めてだ。ほぼ衣。だが、なぜかそれがいい。立ち食いそばにぷりぷりの極太えび天を求めていないということもあるかもしれないが、雰囲気にぴったりな感じがする。
衣が出汁に溶け出し、たぬきそばon the えびといった感じになる。
北海道では定番の黒い出汁。福岡人としてはいまだに慣れないのだが、理解はしている。
「お兄さん、どっからきたの?」とおばちゃんが話しかけてきた。別に事細かに話す必要もないわけだし、とりあえず札幌からこっち方面に用事で来たついでにそばを食べに来たと話し、水を飲んだ。
おばちゃんは「列車は来なくなって寂しいが、お客さんは変わらず来てくれていてありがたい」とも話していた。たしかに、私が着いたころに食べ終わった常連と思しき中年男性の集団が出ていったのも見た。きっと、普通に「ランチ」をしにきたようなものなのだろう。
私が食べ終わるころに、別のお客さんが来た。サッと食べ終え、被ることなくお店を後にした。
にしやさん。美味しいえび天そばをありがとう。
またきます。
にしや
住所 北海道日高郡新ひだか町静内本町5-1-22 JR静内駅
営業時間 7:00~18:00
定休日 火曜日、第1、第3水曜日