JR北海道苗穂工場。北の鉄路を走る車両たちのメンテナンスを行う主力工場だ。
苗穂工場の敷地内に「北海道鉄道技術館」という施設があることをご存じだろうか?
他の鉄道博物館や資料館とは一味違う「鉄道技術館」に行ってみた。
JRの工場に入ることができる!
JR苗穂駅から歩いて約20分。JR北海道苗穂工場の入り口に到着すると、「北海道鉄道技術館」の看板が出ている。手前にあるオブジェ?がSLの動輪を模したものとなっていて面白い。
場所は間違いないのだが、全国にある鉄道博物館のようなテーマパーク感は一切ない。
紛れもなく本物のJRの工場だ。本当に入っていいのか一瞬躊躇しがちだが、そこは気にせず行ってみよう。守衛室のような所があるため、そこで受付を済ませると中に入ることができる。
構内にある踏切。非日常の空間というのはワクワクしてしまう。
煉瓦づくりの大きな建屋が見える。「機関車検修場」となっている。
内部に入ることはできないが、現役で使用されている建物だ。
無料で楽しめる!?
北海道鉄道技術館は「一般財団法人 JR北海道文化財団」により運営されており、趣旨としては次のようになっている。
・北海道鉄道技術の歴史と文化を後世に伝える
・地域に密着した鉄道工場として、一般の方々に身近に感じていただく
そのための場として開設されていることから、入場料は「無料」となっている。
北海道の鉄道の歴史に触れる
技術館の建物自体が明治43年に建築されたもので、歴史的文化価値が高く、北海道遺産・近代化産業遺産に認定されている。建物を見るだけでも一見の価値があると言える。
重厚なレンガ造りの建物。その姿に圧倒されるが、その横に蒸気機関車の姿が見える。
我が国最大・最強と言われた蒸気機関車「C62」。かつては道内において急行ニセコなどで活躍した北海道に所縁のあるC62 3号機。一時期は動態保存され復活運転もされていたが、運行・整備費用が高額なため運行中止となり、今に至っている。
動輪の直径は1075㎜。分かりやすく言うと1m75㎝。とてつもない大きさだ。
建物の中に入る前から圧倒されてしまう。
レンガ造りの建物内部には、かつて道内で活躍した車両がモダンな照明に照らされていた。
「アルファコンチネンタルエクスプレス」(以下、アルコン)
1985年~86年にかけて苗穂工場において改造されたリゾート列車。
既存の気動車を改造してリゾート列車にするという発想の先駆けとなった車両で、アルコンの登場以降、全国各地で同様の改造車両が多く誕生した。その際、苗穂工場の技術力を頼る会社が多く存在し、改造の手助けをしていたという。
キハ82系特急型気動車。
日本初の特急型気動車として誕生したキハ80系の改良型がキハ82系である。
北海道初の気動車特急として活躍したのはこの形式であり、北海道の気動車特急の礎となった存在だ。
どちらの車両も展示されているのは前頭部のみ、しかも台車から上だけという少々寂しい姿ではあるが、運転台に乗り込み各種制御機器を扱うこともできる点は魅力的である。
思い出の列車に再会!?
思わず「懐かしい!」と思われた方のいるのではないだろうか。道内を走っていた特急のヘッドマークたちである。鉄道マニアが喜ぶことはもちろんだが、「北海に乗って山線経由で函館まで行き、青函連絡船で本土に渡った」「夜な夜なまりもにのって釧路まで行ったなぁ」と思い出される方もいることと思う。
日本初の豪華寝台列車として走った「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」、珍しい所でいくと自家用車を列車に乗せ、人と車を同時に運んだ「カートレイン」といった数々のヘッドマークも展示されている。
列車愛称というのは、マニアが好むだけでなく、人の人生の一ページに刻まれるような重要な役割を持つこともある。無くなってしまった列車もあるが、こうして保存していただいていることに感謝である。
気分はデザイナー
鉄道車両を新しく造ったり、改造したりする時はどうしているかご存じだろうか?
実は、車や住宅と同じように必ずイメージデザインを起こしている。
なかなか見ることのできない資料だが、鉄道技術館に苗穂工場が密接に関係していることから見ることができる。
数々の鉄道博物館・資料館を見てきたが、これほどのイメージデザインを紹介しているところは他にはない。
大人も子供も楽しめる!
工場ならではといった展示がコチラ。
気動車に使用されている各種機器のカットモデルだ。
ターボエンジンに必要な「過給機」や、燃料噴射時期を調整する「電子ガバナ」、現在では使用されていないが国鉄時代の主力機関「DMH17C型エンジン」。衝撃を吸収する「カップリング」など、工場だから可能な展示物だと言える。
鉄道部品の細部を目にする機会はほとんどないため、メカ好きも楽しめるのではないだろうか。
マニアックな展示物ばかり紹介してきたが、子供も楽しめるものもある。
名付けて「振子でトライ」。HOゲージの鉄道模型ジオラマを運転できる運転シミュレーターだ。
鉄道模型の先頭にカメラを設置し、その映像を見ながら操作することができる。運転台は実車を模した造りだが、工場が製作しているためほとんど実車そのもの。臨場感はたっぷりだ。
帰り際、見過ごせないアイテムを発見した。
記念品の定番、スタンプだ。
鉄道技術館の建物や、苗穂工場で製造したリゾート列車、北斗星のエンブレムの3種類。
ちょっとしたものだが、何気に嬉しい。
おカタイ展示から遊び心溢れたジオラマやスタンプまで、大人も子供も楽しめるよう工夫されている。
夏休みは鉄道の魅力を感じに行こう!
北海道も夏が近づいてきた。学生にとっては夏休みが近づいてきているとも言える。
どこに行こうか、何をして遊ぼうか、嬉しい悩みで忙しいことだろう。
そんな夏休みのスポットの一つに、「北海道鉄道技術館」を入れてもらいたい。
鉄路存続に揺れるJR北海道であるが、これからの未来を担う若者に鉄道の魅力や重要性を感じてもらいたい。お金をかけずに楽しめ学べる場所でもあるため、家族で行かれても良いと思う。
北海道に鉄道が必要なのか不要なのか、それぞれの視点で考えてもらいたい。100年以上に及ぶ、先人たちの苦労の下に今の北海道が存在しているのだ。
規模は決して大きくないが、中身は非常に濃い「北海道鉄道技術館」。
自信をもってオススメする。
公式HP:
http://www.jrh-zaidan.or.jp/business/page01.html
※開館日時に注意してください
開館日時
毎月第2・第4土曜日 13:30~16:00
なお、5月~8月の4ヵ月間は、第1土曜日も開館
(5月~8月の間は毎月3回の開館)
※都合により臨時休館する場合有