「ニセコ昆布温泉鶴雅別荘 杢の抄」に泊まってみた
国際的なリゾート地であるニセコで選んだ宿
新型コロナウイルス旋風の真っただなか、「日本で最も国際的なリゾート」と呼ばれるニセコへ行ってきました(2020年3月4日&5日)。
冬季のニセコは外国人観光客に埋め尽くされているので、緑の季節にしか北海道民は近づかないところですが、敢えての女子旅を敢行。
インバウンドが激減して閑散としているニセコを目の当たりにしつつ、それでもひらふエリアでウィンタースポーツを楽しんでいるツワモノは外国人ばかりでした。
わずか20年の間に大きく変貌したニセコは、海外の富裕層をターゲットにした高級リゾートというコンセプトが成功して、ラグジュアリーなコンドミニアムやハイエンドなホテルが建ち並んでいます。
その勢いは止まらず今年1月にはパークハイアットがオープンし、12月にはリッツカールトン、2023年にはアマンが開業予定、と世界屈指の外資系高級ホテルが続々とニセコに誕生します。
シンガポールの大手デベロッパーによる建設真っ最中の現場に掲げられていた、「ニセコをさらに高みへ」というキャッチフレーズを読んで、余計なお世話だと思った日本人は私だけじゃないハズ(笑)。
(ちなみにニセコで売買されているコンドミニアムや別荘は億単位がデフォルトで、上記コンドミニアムのペントハウスは10億円だそう…。)
「外国人の、外国人による、外国人のためのリゾート」を勝手に作られている感は、北海道民なら少なからず味わっている小さなトゲではないでしょうか。
そんな複雑な思いを抱えつつチョイスした滞在先は、「ニセコ昆布温泉鶴雅別荘 杢の抄」。
道東の阿寒町を本拠地とした鶴雅グループによる、2013年にオープンした風雅な温泉旅館です。
古くから湯治場として道民に愛されてきた昆布温泉は、観光客でにぎわうニセコの中心部から離れた山深いエリアにあり、大人のおこもり旅にうってつけのシチュエーション。
コロナの影響で重く停滞している空気をスルーして、もはや外国となってしまった二セコで宿を構える道内企業を応援すべく、漫画家の旅友を誘って「杢の抄」へ行ってきました。
(彼女の連載漫画「愛してるって、言いたい」のなかで、お泊りデートの宿泊先として同旅館が登場します。)
今回は国内外問わず旅が大好き女子2名の自由気ままなスタンスから、率直な感想にマニアな意見を織り交ぜつつ、「杢の抄」を勝手に星つき評価でご紹介します!
「ニセコ昆布温泉鶴雅別荘 杢の抄」の総合評価は星4.5
<総合> ★★★★ 4.5
①立地 ★★★★★ 5
②風呂 ★★★★ 4
③食事 ★★★★★ 5
④部屋 ★★★★ 4
⑤接客 ★★★★ 4
⑥雰囲気 ★★★★★ 5
「ニセコ昆布温泉鶴雅別荘 杢の抄」の魅力をひと言で伝えると、まるで別荘のようなプライベート感にくつろぎながら、旅館ならではのおもてなしに癒されるところ。
広々としたゲストルームはのびやかに過ごせて、全25室という贅沢な環境だからこその静けさに満ちています。
ラウンジや廻廊など共有スペースの照明をかなり落としていて、お食事処も半個室なので、すっぴん&作務衣のわが家スタイルでリラックスできます。
とろけそうな泉質の昆布温泉も、感激しまくりのお食事と地酒も、温泉旅館ならではの醍醐味を存分に堪能できる点も高評価。
同じ鶴雅の「別荘」シリーズでも「雛の座」や「碧の座」は高根の花ですが、ちょっと背伸びをすると手の届く価格帯で身も心も潤いまくるので、女子のご褒美旅にオススメしたい宿です。
①立地 ★★★★★ 5
ニセコの中心地から離れた静かな山間に建つ、森のなかの隠れ家といった場所。
周囲にはもみじ滝とニセコアンベツ川が流れ、館内の開口部からは豊かな自然をアートのように鑑賞することができます。
景色重視で滞在するなら、緑の季節や紅葉、冬景色のタイミングに。
・札幌から車で2時間ほど。
・JRの場合は札幌駅からニセコ駅まで2時間ちょっと。ニセコ駅からは無料送迎バスが運行。
・最寄りのコンビニまでは車で10分ほど。
②風呂 ★★★★ 4
昆布温泉特有のなめらかで塩気を感じる名湯ですが、循環ろ過式なので星4つにしました。
小規模ながらも趣のある大浴場は、露天風呂の風情あるライトアップが印象的。
ちょうど粉雪の降る雪見風呂となり、木々が美しく雪化粧される様を眺めながらの贅沢な湯あみでした。
別荘気分にひたれる部屋の露天風呂には囲いがなく、ダイレクトに自然を眺めながら入浴できます。
・時間帯によっては大浴場をひとり占めできる(かもしれない)。
・鶴雅オリジナルのアメニティが高品質で、スキンケアラインには北海道産の原料(黒千石発酵エキス、ガゴメエキス、シラカンバ樹液、サケ皮由来の海洋性コラーゲン)を配合。館内のショップで購入できる。
③食事 ★★★★★ 5
スタンダードな和食会席よりも品数とボリュームを抑えた期間限定の「季節の膳」をいただきましたが、お料理ひと品ひと品に感動を味わいました。
素材の良さはもちろんですが、食材の美味しさを引き出す和食の技術の高さにハートを撃ち抜かれ、すっかりメロメロになったので星5つ。
朝食の和定食も体にやさしくホッとする味わいの品々で、一日のエネルギーを満たしてくれました。
・滞在中は夕食時もラウンジ&バーも、ドリンク代がオールインクルーシブ(2020年4月からはバーのメニューが除外予定)。
・ラウンジでは暖炉で焼きマシュマロ、夕暮れ時にはバーでふかしたじゃがいも、夜食にお茶漬けを提供している。
④部屋 ★★★★ 4
温泉露天風呂付きのスイートルームは78㎡(47畳)の広さで、和モダンなリビングとツインルームで構成されています。
のびのびくつろげる別邸といった印象の室内は、ソファやマッサージチェアでくつろいだり露天風呂を満喫したりと、おこもりにぴったりな環境。
冬季は露天風呂からつながる洗面所が寒くて床の冷たさも気になったので、星4つにしました。
・作務衣の上に羽織る半てんのダッフルボタンがかわいい。
・靴下の用意がうれしい。
・ドリンクバーのグラスや湯呑の洗練されたデザインがナイス。
⑤接客 ★★★★ 4
スタッフさんによって接客スキルに差があったので、星4つにしました。
全体的に若手スタッフさんが多くよく言えばフレッシュな対応でしたが、研修中なのかコロナという世情的なものなのか、心ここにあらずな方も。
夕食時にサーブしてくれたスタッフさんはとても感じが良くて、女子トークにはにかみながらつき合ってくれた癒し系。
ちょっとした会話も旅の質を上げてくれる有効なスパイスです。
・ラウンジでドリンクと留寿都名物みそまんじゅうをいただきながらのチェックインが、おもてなし感をアップ。
・チェックアウト後にショップに寄ってしまったせいか、お見送りがなくて残念だった。
⑥雰囲気 ★★★★★ 5
レンガ造りの外観、木材をふんだんに使ったエントランスとラウンジ、1枚板をカウンターにしたバー、漆喰の廻廊。
至るところを自然素材でしつらえた館内は、森のなかにいるような清々しい芳香が漂っていました。
(スタッフさんに尋ねたところ、芳香剤は一切使用していないとのこと。)
もちろん館内すべてではなくクロスを使っている空間もありますが、自然素材を使った建物だけに許される時を重ねるごとに深まる味わいこそ、経年劣化ではなく経年「変化」としてこの先も「杢の抄」が顧客に選ばれ続ける大きな魅力になると予想します。
・玄関扉に彫り込まれた「杢の抄」のロゴは、阿寒町の彫刻作家 滝口政満さんが手掛けたそう。
・木彫り、トンコリ(楽器)、イナウ(祭具)、マタプシ(鉢巻)など、アイヌ民族の芸術作品を展示している。
・ラウンジ「アペソ」とバー「アペ」は昼と夜の雰囲気が異なり、夜のライトアップされた森を眺めながらのお酒は最高。
サツッター読者の皆さまへ
新型コロナウイルスの影響を鑑みた対策が日本経済を停滞させていますが、そろそろ慎重に動きはじめてもいいのではないでしょうか。
過剰に恐れたり過小評価に陥らず、人混みを避けること、こまめな手洗いの徹底、そして睡眠・食事・運動のバランスを整えて健康的な生活を心がけること。
細心の注意を払いながら日々の営みを取り戻して行くことで、本格的な不況に突入することを避けたいと願っています。
(98年からはじまったデフレ不況の影響では、国内の自殺者数が10年間で14万人増加したというデータがあります。)
人間の脅威はコロナだけではなく、規模の大きなところでは自然災害や戦争、身近なところでは交通事故や病気など、死を脅威と捉えるなら人間のまわりって実は脅威だらけです。
極論を言えば人間の死亡率は100%なので、生と死は表裏一体であり、必ず2つで1セットの現象。
車の運転だって死ぬリスクを受け入れた上で、事故らないようにルールに則って使用しています。
コロナも同様に、感染するリスクを受け入れて共存する方向に進むしかないことに、気づきはじめた人から行動を開始している状況にあります。
北海道の先住民族であるアイヌ民族は、1万年以上も安寧が続いた縄文時代に生きた人々の末裔であると、遺伝子的にも解明されてきています。
縄文人の思想哲学を受け継ぐアイヌ民族は、大自然の森羅万象をカムイ(神)として敬意と感謝とともに共生してきました。
人間中心主義的な発想ではなく、人間も大自然の一部として生かされているのであり、命あるものすべてが対等な関係性にあると捉えています。
自然に抗わず、自然と調和して生きることは、疱瘡(天然痘)さえもカムイ(神)として迎え入れて共生することでもありました。
先人たちの叡智をもったアイヌ民族と共に生きる北海道から、調和の精神性を広げて行きたいとこの記事を書いています。
北海道の観光客入込客数のデータ(2018年度)によると、宿泊施設に日帰り&宿泊した総数が約5,520万人のうち、道内客が4,601万人(83.4%)、道外客が607万人(11.0%)、外国人客が312万人(5.6%)でした。
客数だけで捉えると、インバウンドに頼らなくても地元の私たちが道内旅行をすることで観光業界が息を吹き返します。
なかでも外国人観光客の比重が多い冬季のニセコは、道内でもダメージの大きな地域だと予想されます。
今後も北海道で活躍してほしい企業に一票を入れる心意気で、ドライブがてらニセコへ旅してみませんか?
ニセコ昆布温泉鶴雅別荘 杢の抄
〒048-1511
北海道虻田郡ニセコ町ニセコ393
0136-59-2323
https://www.mokunosho.com