「悲劇」と聞くと、なんとなく「最後に主人公が死んでしまう泣ける話」というイメージを持ってしまっている筆者。
シェイクスピアに全く明るくないこともあり、『マクベス』もそんな感じの話なのかなと思っていました。
が、とんだ思い違いでした!
とあるきっかけを境に、それまで思いもしなかった野心に目覚めてしまう男・マクベスと、その野心を煽り手を貸すマクベス夫人。
ひとつ足を踏み外したが最後、坂を転がるように没落の一途をたどる夫婦を描いた、ヒューマンドラマなのでした。

不思議なのは、この夫婦がしたことは悪逆だというのに、観ているとどことなく共感してしまう部分があることです。
と言っても、その行動に共感するわけではなく、心情に共感するのです。
ふとした瞬間に野心を持ち、その誘惑に抗えず、後悔するも引き返せずに転落していく。そういうことは、誰にでも起こりうることなのだろうなと、考えさせられます。
今作の夫婦に同情することはありません。けれど、「人として持ちうる野心や後悔」について、反面教師となってくれるのは間違いないでしょう。

派手な演出のない作品ですが、「人の心理」に焦点を当てていて、役者の演技力が物を言います。
主人公・マクベスを演じるマイケル・ファスベンダーの演技、じわじわとくるものがあります。狂気に染まる瞬間に見せた笑顔に、背筋が寒くなりました……!
父王を暗殺され、逃亡するもその罪を着せられてしまう王子・マルコム役のジャック・レイナーの演技が、善良なキャラクターを素朴に表わしているようで、好ましかったです。

ところで今作、台詞回しがとっても印象的です。なんとも詩的!
仕える王が暗殺されたことを伝える家臣の台詞だとか、夫が狂気に呑まれていくのを止められず衰弱する妻の悔恨の台詞だとか、ひとつひとつが凝った言い回しで、まるで舞台劇を観ているような気分になります。
ああ、シェイクスピア作品の舞台ってこんな感じなのだなあと、なんとなく納得しました。

惜しむらくは、せっかく字幕で観たというのに、筆者が英語を全く聞き取れないことでしょうか。
今作は古典英語を使っているそうで、マクベス夫人を演じたマリオン・コティヤール(フランス生まれで、英語は第二言語)は専門家の言語指導を受けたとのこと。
英語がわかれば、その苦労や成果を直に感じることができるでしょうに、非常に残念です。
英語を勉強しようと決心したのは、言うまでもありません。

映画『マクベス』は2016年5月13日(金)から公開。
北海道では「札幌シネマフロンティア」と「ディノスシネマズ札幌劇場」で観られます!

映画『マクベス』公式サイト:http://macbeth-movie.jp/
札幌シネマフロンティア:http://www.cinemafrontier.net/cgi-bin/pc/index.cgi
ディノスシネマズ札幌劇場:http://cinema.sugai-dinos.jp/pc/sapporo/