【VITA-01】十勝3時間耐久レースに参戦してみた

レースのために北海道へ転職・移住した福岡出身の“サラリーマン・レーサー”マスオ。です。

先日開催された「十勝3時間耐久レース」のVITA-01クラスに参戦しましたのでご紹介させていただきます。

【VITA-01】十勝3時間耐久レース

2017年8月20日(日)

天候は曇、最高気温21℃と8月というのに寒さを感じる中、十勝スピードウェイにおいて「十勝3時間耐久レース」が開催された。

2008年を最後に開催が休止されている「十勝24時間レース」に代わるかたちで昨年から始まった「十勝3時間耐久レース」はJAF公式戦である北海道クラブマンカップレースの特別戦として開催されている。

ビッグイベントが無くなり寂しい印象の十勝スピードウェイであったが、徐々にではあるがサーキットとしてあるべき姿を取り戻しつつある。

さらなる盛り上がりを見せる「VITA-01」

十勝3時間耐久レースは「VITA-01」と初代vitzを使用した「N1-1000」の2クラスで争われるが、メインカテゴリーである「VITA-01」は2010年に誕生して以来その人気は留まることを知らず、全国各地のサーキットでスプリントから耐久まで幅広いレースが開催されている。

さらに、今年からはVITA-01を使用した「競争女子選手権」もスタートし、日本のモータースポーツ界の革新的レースとしてますます盛り上がりを見せている。

【競争女子選手権とは?】
この『KYOJO CUP』は、関谷正徳氏がプロデュースした女性ドライバーのみが参加できる新たなレース。これまでモータースポーツでは男女が同じレースを戦う環境のみだったが、関谷氏は男女では身体能力が異なることから、他のスポーツと同様に「女性プロドライバーのみのレースシリーズ」を作るべきとし、シリーズをプロデュースした。
(AUTOSPORTwebより抜粋)

KYOJO CUP詳細情報: https://www.makuake.com/project/kyojo-cup/
KYOJO CUP公式Facebook:https://www.facebook.com/kyojocup/

タイヤによりクラスが分かれる

VITA-01に使用されるタイヤは昨年まではダンロップ製であったが、今シーズンからはヨコハマ製に変更となっている。しかし、今シーズンの北海道クラブマンカップのVITAレースにおいては「耐久レースまではどちらのタイヤも使用可」というルールになっている。

ヨコハマ製タイヤとダンロップ製タイヤのタイム差は約3秒。ダンロップ製のほうが速い。

このような理由から、VITA-01クラスは「ダンロップクラス(以下、Dクラス)」と「ヨコハマクラス(以下、Yクラス)」の2クラスに分けられ争われることとなった。

【VITA-01】参戦チーム・ドライバー紹介!


【A】
Car No.610「恒志堂レーシングVITA1号機」(D) Driver:佐藤 元春,平中 克幸
Car No.310「恒志堂レーシングVITA2号機」(Y) Driver:大島 雄一郎,久保 拓也
Car No.712「恒志堂レーシングVITA3号機」(Y) Driver:竹谷 和浩,中川 隆吾

【B】
Car No.5「KIZASHI号VITA」(D)Driver:近藤 保,近藤 拓,浅井 亮博

【C】
Car No.7「十勝スクール鬼塚兄弟VITA」(D) Driver:鬼塚 益生,鬼塚 哲生

【D】
Car No.739「UNI-Techno☆渚難済VITA」(D) Driver:岩田 別輝,杉原 直弥
Car No.77「モレキュール☆渚難済☆VITA」(D) Driver:大山 正芳,萬雲 恒明


【E】
Car No.88「MART・さかの歯科 VITA」(Y) Driver:坂野 研,後藤 比東至

【F】
Car No.8「十勝Rスクールお魚せんせVITA」(Y) Driver:樋口 千樹,小野 勝巳

【G】
Car No.18「Team OWL☆さくら眼科VITA」(D) Driver:古井戸 彩子,古井戸 竜一

【H】
Car No.48 Team OWL☆さくら眼科VITA」(Y) Driver:山口 琢美,今野 訓昌


【I】
Car No.769「シルバーアローbitcoinSATRI01」(D) Driver:津々見 友彦,長坂 尚樹,神谷 誠二郎

以上、全12チーム

※チーム名横の(D)、(Y)は使用タイヤメーカーを示す (D):ダンロップ、(Y):ヨコハマ


現在、十勝のVITAレースで最も勢いのあるチーム「KOSHIDO Racing」
今シーズンから北海道クラブマンカップに本格参戦をしているが、練習に練習を重ねていることから全ドライバーが短期間でスキルアップをしており、今後も目を離せないチームだ。

Car No.610「恒志堂レーシング1号機」は、クラブマンカップでも連続表彰台を獲得し勢いに乗っている佐藤選手に加え、現役スーパーGTドライバーでもある札幌出身のレーシングドライバー「平中 克幸」選手も参戦していることから、今レース本命の1台と言える。


VITA-01生みの親、ウエストレーシングカーズの神谷CEO。普段は明るく陽気な方であるが、コースイン時は鋭い眼差しで先を見つめている。


神谷さんの計らいもあり、今回のレースには日本のモータースポーツ界を牽引されてきた津々見友彦氏や長坂尚樹氏が参戦された。

現役時代の活躍を知っている者からすると、このお二方は雲の上のような存在であり、一緒に走ることができただけでも光栄なことである。

そんなレジェンド達を思ってか、神谷さん自らタイヤのエアチェックを行っていた。神谷さんも日本モータースポーツ界のレジェンドなのだが・・・あまりにも凄すぎる光景を目撃してしまった。


岡山国際サーキットを拠点にVITAレースに参戦されている渚オートの2台。
初十勝にも関わらず即座に適応している様子はさすがの一言。実力者集団のレベルの高さを感じられた。
地元勢に割って入ることができるか、注目の2台。


Car No.5「KIZASHI号VITA」とCar No.8「十勝Rスクールお魚せんせVITA」は、十勝レーシングスクールのマシンをレンタルしての参戦。

どちらのチームのドライバーもVITA経験は少ないとのことだが、レース経験者と言うことで限られた時間でどこまでVITAを乗りこなすことができるかがカギとなってくる。


十勝VITAレースの常連組も参戦!
Car No.88には2016年チャンピオンの坂野選手、Car No.18には2015年チャンピオンの古井戸選手、Car No.48には2012年チャンピオンの今野選手と、歴代十勝のチャンピオンが集結!

十勝を知り尽くしたチームがどのようなレースを見せてくれるのか楽しみである。


Car No.7「十勝スクール鬼塚兄弟VITA」(D) Driver:鬼塚 益生,鬼塚 哲生

今回も遠く福岡から十勝の地にやってきてくれた兄。

10年以上前のことだが、SRS-Fの最終選考まで勝ち進んだ実力者である。
昨年に続き2回目のVITA-01、十勝クラブマンコースであるがぶっつけ本番でどこまで実力を発揮できるか、注目である。

兄弟チームの利点は意思疎通がとりやすいことだ。しかし強豪を相手に勝つことは容易ではない。

私としても全力で兄のサポートをしていく次第である。

予選

35分間で争われる予選。ベストタイム順で決勝のスターティンググリッドが決定する。
どのチームもポールポジションを獲得すべく、全力で挑む。

VITAはタイヤの違いでラップタイムが3秒ほど違うことやN1-1000(vitz)も混走しているため、クリアラップを取ることが難しい。


たとえクリアラップがとれたとしても、その時のマシンコンディションが整っていなければ最速タイムを出すことは難しい。

あらゆる要素が絡み合い、合致したチームがポールポジションを獲得することができる。

残り7分ほどを残したところでコースアウトしたマシン回収のため赤旗中断となり、そのまま予選終了となった。

【予選結果】

【総合ポールポジション】
Car No.610「恒志堂レーシングVITA1号機」(D) Driver:佐藤 元春,平中 克幸

1分31秒714というコースレコードを更新する驚異的タイムを叩き出したのは平中克幸選手。

当然というべきか、異次元と言うべきか、現役スーパーGTドライバーの凄さを見せつけられた結果となった。

私のチームは4番手ポジションであるが、2位から5位までが100分の5秒(0.05秒)以内にひしめく大混戦となった。

タイヤのおいしいところを使えなかったためまだまだタイムが伸びる余地はあったのだが、制限時間内にタイムを出せなかったことも含めそれが今の実力である。

【Yクラス ポールポジション】
Car No.88「MART・さかの歯科 VITA」(Y) Driver:坂野 研,後藤 比東至

昨年のチャンピオン坂野選手は新しいタイヤに苦しみながらもYクラスのポールポジションを獲得。
ヨコハマ製タイヤのデータが少ない中、今回のタイムが今後の指標となることは間違いない。

こちらのクラスも0.2秒内に3台がひしめく混戦となった。

【VITA倶楽部in十勝】開店!

VITAレース参加者に向けてのホスピタリティブース「VITA倶楽部in十勝」が開店した。

地元の食材を使った手作りのおにぎりやおかず、今が旬の“朝もぎ”とうきび、夕張メロン、地元のスイーツなど、十勝のおいしい食べ物が提供された。

参加者はレースではライバルだが、同じVITAレースをする仲間でもある。

お互いをたたえ合い、時には言い争うこともあるが、それだけ皆がVITAレースに対し真剣に取り組み、愛し楽しんでいる証拠でもある。

決戦前のひととき、和やかな雰囲気で交流を深めることができる素敵な時間だ。

決勝スターティンググリッド



【決勝スタート!】3時間先の栄冠をつかむのは!?

5分前、3分前、1分前、30秒前とカウントが進み、グリーンフラッグが振られセーフティカー先導でフォーメーションラップがスタートした。

今耐久レースはローリングスタートである。前を走る車に置いていかれないよう、距離感が重要となる。
最終コーナーを立ち上がりセーフティカーがピットイン。

各車一気に加速し、グリーンランプ点灯で決勝スタート!


2番手スタートのNo.18が後ろをけん制するスタートを切ったため、トップのNo.610があっというまに離れてしまった。

私は2周目の2コーナーでNo.77をパスし3番手に浮上しトップ2台を追いかける。

私のマシンはレース前半に強いことが分かっていたため、序盤はプッシュして前を追いかけた。
予定通り前との距離が縮まったところで、周回遅れのマシンが出始めた。

ここからは周回遅れのマシンを交わすテクニックも重要なカギとなってくる。

6周目の9コーナーでNo.18が周回遅れを交わすタイミングで姿勢を崩しスピン。2位に浮上。

トップとの直接対決の構図となった7周目、2~3コーナーにかけてトップが周回遅れに詰まり急激にペースダウン。一気に差が詰まってしまったため、接触を避けるためにラインを変更。しかし、次のコーナーで接触してしまい、お互いにスピンしポジションダウンとなってしまった。

この接触で私のマシンはステアリングセンターがずれてしまい、ステアリングが常時5分ほど右に傾いた状態となってしまった。

緊迫したピット作業


耐久レースの醍醐味の一つにピット作業がある。

マシンがピットインしてきた時、ピットの緊張感は最高潮に達し、ピリピリした空気に包まれる。

規程ではレース中3回のピットストップが義務付けられており、1回のストップ時間も3分と決まっている。


給油作業中は他の作業は一切禁止となり、車に触ることすら許されない。もちろんドライバーはマシンから降りていなければならない。給油完了後、エアチェック・トルクチェック等、ピットクルーの迅速な作業のおかげで安心して走ることができる。


私たちのマシンは燃費が厳しいことが分かっていたが、この時点では予定通りの流れで進んでいた。

給油終了までの間、兄に車の状態・ライバルの様子を伝える。
無線を搭載していないチームはこの時間での情報共有はとても重要なことだ。
ドライバー交代をして、3分経過と同時に兄がピットアウトした。

全てが狂った「3分14秒」

私たちのチームは途中まで2位を走行していた。

唯一の気がかりは燃費だった。チェッカー+1周分の燃料の余裕を持たせる計算で進めていた。
チームからサインボードで燃費走行の指示が出たためラップタイムを3秒落としての周回を重ねていた。このままいけば全てが予定通りに進み、表彰台は確実・・・と思っていた矢先、モニターに「3分14秒」という謎のラップタイムが表示されたというのだ。


ピットクルーの人数も限られているため、順調に走っているかどうかを確認する術はこのモニターしかない。

そのモニターに1周のラップタイムが3分14秒と表示され、順位も一気に落ちたと表示されれば、ピットクルーとしては「コース上でトラブルが起きた。もしくはスピンか何かがありストップしていた」と判断する。

ということは、計算上1周分燃費に余裕ができたと言えるため、予定より1周早くペースアップの指示が出された。

ドライバーはそのような事態を知らないため、ピットからの指示を忠実に遂行するのみ。

しかし、実は計測装置側のトラブルであり、コース上では何も起きておらず私は順調に周回を重ねていた。

燃料が持つかどうか、全てはそれにかかっていた。

決勝結果


【総合優勝】
Car No.610「恒志堂レーシングVITA1号機」(D) Driver:佐藤 元春,平中 克幸
【2位】
Car No.77「モレキュール☆渚難済☆VITA」(D) Driver:大山 正芳,萬雲 恒明
【3位】
Car No.18「Team OWL☆さくら眼科VITA」(D) Driver:古井戸 彩子,古井戸 竜一


【Yクラス 優勝】
Car No.88「MART・さかの歯科 VITA」(Y) Driver:坂野 研,後藤 比東至
【2位】
Car No.712「恒志堂レーシングVITA3号機」(Y) Driver:竹谷 和浩,中川 隆吾
【3位】
Car No.310「恒志堂レーシングVITA2号機」(Y) Driver:大島 雄一郎,久保 拓也

まさかのガス欠チェッカー

チェッカーに向けて大きな順位変動もなくレースは進み、私たちのチームは3位表彰台が見えていた。

しかし、ガス欠のような症状が時折出ていたため、なかなかペースを上げることができない。
他車に追われても無理はできず4位にポジションダウン。

そしてレース終了まで1分を切ったところで完全にガス欠症状が発生した。
このままだとチェッカーを受けることすらできなくなる。チェッカーだけは何としてでも受けなければならない!

目標を順位からチェッカーを受けることに切り替え、惰性走行を使いながら燃料を持たせた。
最後の1周はエンジンがブスブス言いながら今にも止まりそうな状態だった。

チェッカーが見えた時は安心感に包まれ、どうにか3時間を走り切ることができた。

チェッカー後、半周したところでエンジンストール。マシンをコースわきに寄せストップさせた。
危うくチェッカーを受けることができなくなるところだった。

【結果】
Car No.7「十勝スクール鬼塚兄弟VITA」(D) Driver:鬼塚 益生,鬼塚 哲生
5位

レースを終えて

序盤に接触もあったが、途中まで良いペースで進んでいただけに非常に残念な結果となってしまった。

たらればではないが、あの時モニター表示に異常がなければ・・・あと1周分燃料に余裕があれば・・・と悔やまれることが多かった。

しかし、これが今の実力である。来年の耐久レースに向けての課題が明確になったと言える。


マシンを準備してくれた十勝レーシングスクールチーム、全力を尽くし正確な燃費計算でチェッカーまで走らせてくれたチームクルー、そして福岡から参加してくれた兄に心から感謝したい。

そして、共にレースを盛り上げてくれたライバルチームにも感謝したい。
遠方から参加していただいたチーム、十勝の常連チーム、そしてレジェンドチーム。
全てのチームがいなければ成り立たなかったレースでもある。

十勝のレースの魅力を感じていただき、ぜひまた参戦していただきたいと切に願う。

「恩返し=レースに関わり続けること」

レースで勝つことだけを考えれば、兄とではなく十勝のVITAドライバーとコンビを組むことが最善の策だ。

しかし、私はこの耐久レースに対して特別な想いをもって参戦している。

兄は十勝で開催されていた「日産レーシングスクール」を原点に、プロになるために本気で活動をしていたが、SRS-Fの最終選考まで勝ち進んだものの惜しくもプロになることは叶わなかった。

「きっぱり諦めた」と言っていたが、本気で追いかけた夢をそう簡単に諦められないことは、夢に破れ挫折を味わった経験のある私には理解できた。

実力を持った人間が、地元の草レースで燻っていることはもったいない。

「いつか兄を十勝に呼び、兄弟で公式レースに参戦する!」という想いを抱いていたため、こうして実現できていることが本当に嬉しい限りである。

さらに重要なことは、「VITA-01」というレーシングカーでレースができることだ。

一度でもフォーミュラーやレーシングカーを体感したことのある人間は、市販スポーツカーではどこか物足りなさを感じてしまう。

電子制御やパワーがないマシンであるがゆえに、ドライバーの腕とセッティング能力が試される「アナログマシン」なのだ。

ごまかしがきかないマシンだからこそ、レースの楽しさ・やりがいも一入だと言える。

「VITA-01は楽しい!だが、速く走るには奥が深いマシンだ。弟に負けて悔しい!また十勝に来るぞ!」by兄

十数年前に兄が十勝を訪れていなければ私が十勝に来ることもなかった。
つまり、私がモータースポーツ活動をするきっかけをつくってくれた恩人でもある。

こうしてレース活動を続けていくことが、十勝レーシングスクールチーム、そして兄への恩返しに多少なりともなっていれば幸いである。

次戦予告

北海道クラブマンカップレース第3戦
2017年9月24日(日)
十勝スピードウェイ

ぜひ一度【VITA-01】の白熱したレースを肌で感じてみてはいかがだろうか。

【十勝スピードウェイ 公式レース動画】
http://tokachi.msf.ne.jp/blog.php?id=1724