クローン病に負けない!情熱の詰まった「U.N dream Factory冬のスノー走行会」を見てみた
2018年3月12日 15:39
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U.N dream Factory 冬のスノー走行会とは?
帯広市にあるカーショップ「U.N dream Factory」さん主催の雪上走行会です。 毎年、十勝スピードウェイの特設コースにおいて開催されており、今年で11回目という十勝ではお馴染みの走行会として定着しているイベントです。過去の嫌な体験から生まれた走行会!
U.N dream Factory代表の「上田 朋紀」さんは、世界的に活躍されているラリー選手のもとでメカニックをされたり、全日本ランカーのマシンを製作されたりと、所謂“砂利系”を中心に活動されている方です。 そんな上田さんが若かりし頃に体験した出来事が、この走行会を始めるきっかけになったと言います。上田さんがとある走行会に参加した時のこと。 誰でも参加可能だということで行ってはみたものの、参加している人はほとんどが常連さんで、腕の立つ人ばかり。 参加条件に制約はなく誰でも参加可能だったわけですが、その場の空気は完全アウェイ。 「誰だアイツ?」 「見たことない顔だな?」 「どれ、腕前を見てみようじゃないか」 といった雰囲気が漂い、妙に気を遣ったり緊張したりと、楽しめるものも楽しめない。 それからいくつかの走行会に参加しても、ほとんどが同じような雰囲気。 めげずに参加し続けることで少しずつ話ができるようになったが、そういった風潮に常々疑問を感じていた。。。
「本当の意味で初心者に気軽に参加してもらい、楽しんでもらいたい!」 「そんな走行会がないのであれば、自分が開催すればいいじゃないか!」 という想いから、この走行会が生まれたそうです。
継続は力なり!バッシングを受けながらも次第に理解されるようになる。
第1回目のスノー走行会を開催するにあたり、とにかく初心者のための門戸を開くことに徹底するため、いくつかのルールを作ったそうです。 ・競技に向けての練習目的の参加お断り ・全日本戦出場者等の上級車お断り ・大所帯(グループ)での参加お断り 誰しもにこのルールを適用したところ、かなりのバッシングを受けたそうです。 「そんなことやっても無意味だ」 「どうせ成功するはずがない」 「そんなルールを作るのならもう参加しない」 今までにないことを始めようとすると、必ず反対派が出てくるもの。理想の走行会を作り上げるために、心を鬼にしてルールを徹底したそうです。 その結果、全くの初心者や、スポーツカーではなく普通の車に乗っている方など、「実は興味を持っていた」という方々が大勢参加! 回を重ねイベントとして定着した頃、マンネリ化を防ぐためにもテコ入れを図る必要があると判断し、「上級車でも競技目的でも参加OK!」という、当初のルールを撤廃する方針に変更したといいます。 すると、一時は離れてしまっていた人々が上田さんの元に戻ってきて、初心者ばかりの走行会の中に全日本ランカーなどの上級者に参加してもらうことで、レベルの高い走りを間近で見たり、同乗して体感してもらったりと、車の楽しさを共有できる場となりました。 この走行会においては、上級車も初心者も老若男女関係なく皆が同じ目線で交流ができる。 開始当初はなかなか理解されずバッシングを受けてきたものの、理想とするイベントを実現するために情熱をもって継続し続けた結果、11年という歴史あるイベントに成長したことは上田さんの想いが多くの人に理解され賛同されているなによりの裏付けと言えるでしょう。参加者に満足してもらう“秘策”
よくある謳い文句として 「初心者大歓迎!初めての方でも安心!」 という言葉を目にします。 主催側としては「ぜひ参加してもらいたい!」との想いで表記しているのだと思いますが、見ず知らずのイベント・場所へ行き、初めましての方々と接することはそれなりの緊張とストレスが伴ってしまうものです。 走行中は楽しいものですが、待機時間や休憩時間などでは話す人がおらず、一人でポツンと過ごしてしまう・・・そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか? そこで上田さんが思いついたのが「女性を呼び、同乗走行や声掛けをお願いする」という秘策。 知人女性に声をかけ走行会に来てもらい、参加者の様子を見ながら同乗したり、写真を撮ったり、お話したりと、初めましての方でも打ち解けやすい仕組みをつくっていたのです。 車好きの男は、自分の走りや車について褒められると嬉しいもので、さらに女性に見られていると思うとカッコイイところを見せようとついつい意気込んでしまうもの(笑) 聞くところによると、この“秘策”を楽しみにしている人もいるとかいないとか(笑) 「おたくのマシン速いですね!ぜひ乗せてください!」 「テクニックを横で見させてください!」 「動画撮らせてください!」 同じ趣味、同じ目的で集まってきた者同士ですので、打ち解けるのに時間はかかりません。 今回の走行会に参加された方を見ていると、つまらなそうにしていたり一人でポツンとしていたりする人がいなかった印象を受けました。今年の走行会も大成功!だが・・・
参加者全員が「大満足!」と言っていたように、大成功に終わった走行会。 何の問題もないように思えますが、実は今年は開催を中止する予定だったそうです。 その理由は参加台数です。 近年は「若者の車離れ」が叫ばれているだけでなく、モータースポーツ自体の活気がなく、こと北海道のような地方では尚更です。 F1を目指すような若い育成ドライバーたちがしのぎを削る光景はプロ志向の世界のお話。 私たちが関わっている趣味としてのモータースポーツは、過去から継続している人(年配者)かお金に余裕がある人が中心になって活動しているのが現状です。 インターネットやスマホといったツールが普及したこともあってか、昔のように「車が恋人!」「車が一番!」という人は少なく、「車は好きだけど、走ることに興味はない」という考えの人が多いようです。 いくら情熱をもってイベントを開催しても、人が集まらなければ意味がありません。 現実的な話では、採算がとれなければ辞めざるをえない状況に追い込まれてしまいます。 今回の走行会は多くの方の協力があって、各方面への声掛けなどで参加台数が確保でき、どうにか開催に至ったとのこと。 私が参戦しているレースだけでなく、走行会という純粋に楽しむ場ですら危機的状況にある現状を目の当たりにしました。大変でも続ける理由。クローン病と向き合い乗り越える力に!
11年もの長きにわたって走行会を主催し続けている上田さん。 イベントの告知から参加者の確保、当日の運営等々、主催するということは肉体的にも精神的にも(金銭的にも)消費するため、大変な労力が必要です。 なぜそこまでして続けることができているのか? それには、上田さん自身が闘っている「ある病気」との関わりがありました、 ある病気というのは「クローン病」です。≪クローン病とは?≫ 口から肛門までの消化管に慢性の炎症が起きる病気。 消化管のあらゆる部分で炎症が発生し、寛解と再発・再燃を繰り返す。 今のところ完治させる治療法がない「指定難病」に定められている。 詳細は下記URLからご覧ください。 難病情報センターweb:http://www.nanbyou.or.jp/entry/81上田さんはその症状から何度と手術を繰り返し“人工肛門”を取り付けなければならない状態となり、突如として身体障害者となってしまいました。
≪そもそも人工肛門とは?≫ 人工肛門や人工膀胱などの排泄口のことをストマ・ストーマと言い、ストマを装着した人は、オストメイトと呼ばれます。 ストマの身体障害者は、一定時間が経つと、袋に溜まった排泄物を定期的に処理する必要があります。 自宅にいるときは、普段の生活環境で排泄物の処理ができます。外出先でも、定期的にストマの袋に溜まった排泄物を処理しなければいけません。 オストメイトに対応したバリアフリーのトイレが整備されている施設もありますが、数が少ないのが現状です。そのため、長時間の外出が困難なのが、ストマの身体障害者の特徴です。 オストメイトは、服を着た状態だと、外見では身体障害者とはわからないので、周囲の支援が受けにくい内部障害です。 ストマを持つ身体障害者は、身体障害者手帳の4級に通常は認定されます。日常生活の制限が多い病状だと、さらに重度の等級になる場合もあります。 Webサイト「身体障害者手帳のメリットを、毎月いくら活用していますか?」より引用さらに、この病気はいかに寛解状態を継続するかが大事になってくるため、適切な治療を行うために定期検査を受け続けなければなりません。 上田さんの場合、4週間に一度の検査と抗がん剤の一種のレミケードという免疫抑制剤を投与することが欠かせなくなっていることにより、その度に帯広から札幌の病院へ通っているそうです。 現在の病状は、下痢や腹痛に加えて病変病巣がどんどん他の消化器に転移してきているとのこと。(腸はもちろん十二指腸や胃などへ) レミケードという薬は、様々な副作用を発生することが確認されています。 症状を抑えることを目的に投与している薬が、場合によっては別の症状を引き起こしてしまう現実に憤りを感じずにはいられません。 一日も早く、安心・安全で効果のある治療薬が開発されることを願ってやみません。 レミケードの副作用について:http://www.remicare-cd.jp/forpatient/safety/sideeffect.html 直接お話をするまで、上田さんがまさか難病をお持ちだとは全く気づきもしませんでした。 むしろ、ちょっとやんちゃで陽気な方だなと思えるほどで(笑) ご自身の体調管理だけでも大変な状態で、どうしてここまで情熱を注ぐことができているのか? 上田さんは言っていました。 「自分の活動がクローン病の患者さんはもちろん、それ以外のあらゆる病気によって障害者になってしまった人たちやそれによってやりたいことを諦めてしまった人達に勇気を与えたい」と。 症状からくる痛みや下痢、倦怠感、高い確率での手術やこれからずっと病気と向き合っていかなければならない現状に気持ちを落としてしまう方が多いそうです。 やりたいこともできない、生きる意味を見失ってしまう。 そんな同じ病気やその他の病気でも悩み苦しんでいる方々に勇気と希望を与えるためには、自らの行動で示すことが何より重要なのだと。 つまり、この走行会というイベントを開催し続けることや、患者会などの会合においてその中で患者代表として意見したり簡単な体験談などの講演をしたりすることが、様々な病気と闘う人々に向けての強力なエールになると上田さんは考えてあるのです。 病気に負けない!めげない!そして、一人でも多くの人にクローン病という病気があることを知ってもらいたい! 上田さんの情熱を通じて、私自身クローン病の存在を知り、理解することができました。
上田さんからみなさんへのメッセージ
「まずこの場をお借りして 取材してくださったこと、また病気のことを取り扱ってくださったことを 心から感謝いたします。 今後モータースポーツがどう変化していくかは分からないですが、あらゆる人達に馴染みやすいカテゴリになれるように小さな力ではありますが貢献できたらと思っております。 難病に関しても、世の中にはまだまだ解明されてない病気は数えきれないほど存在しております。その中にはまだ治療法もなく、そして国から特定疾患の認定もおりてないものがあります。そういった病気をもつ患者さんは莫大な治療費を支払わなければならないし、完治も見込めない状況です。 そう考えると私の病気は特定疾患に認定され治療法もあるので、まだまだ恵まれている状況だと言えます。ですので、感謝すべきことは沢山あると思っております。 そして、何より病気になることでもちろん辛いことも沢山ありましたし強いられることもありましたが、今となっては病気になったことで経験できないことを経験できて逆に感謝しています。 例えば、医療に関する知識や法律に詳しくなったこと。 そして更に辛さを味わうことで人の痛みを理解できるようになりましたし人に寄り添えられるようにも養われました。辛い人の側で共に涙を流すことができるようになったりと、感情移入ができるようになりました。 病気になることによって得ることも沢山あり、結果良かったなーと思えるようになりました。 病気を理由にできることもできない、とならないようにこれからも努力していきたいと思っております。 『健常者には負けない!』 をモットウにこれからも日々成長していけたらと思っております。 U.N dream Factory代表 上田 朋紀私は「出来るか出来ないかではなく、やるかやらないか」を信念として様々な活動しています。 上田さんとお話をしていると、初めましてにも関わらず通じ合えるものがあったように感じました。 それは、私の信念と似た想いをお持ちだったからではないかと思っています。 自分ばかりが大変だと言っていては何も前に進まない。 できることはやる。やらなければ結果は分からない。 極寒の北の大地、帯広の小さなカーショップ「U.N dream Factory」 そこには、クローン病と闘いながらも強い情熱で活動されている一人の男性がいました。 最後に、この場を借りて取材に協力していただいた U.N dream Factoryの上田さん 十勝スピードウェイの小谷さん 当日にお付き合いいただいた方や参加者の皆さま 極寒の中、当日は大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。 【U.N dream Factory】 公式webサイト:http://grove-runpopvol11.wixsite.com/unfactory1 公式Facebook:https://www.facebook.com/undreamfactory/ 【十勝スピードウェイ】 公式webサイト:http://tokachi.msf.ne.jp/ 公式Facebook:https://www.facebook.com/tokachispeedway/