【北海道日高】約160羽しか生息していない絶滅危惧種「シマフクロウ」を保護するため、3つがいの繁殖地 合計25.7ヘクタールを新しい野鳥保護区に

2022年3月16日 19:30 380 Views
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サツッター編集部

公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、会長:上田恵介、会員・サポーター数約5万人)は、現在約160羽しか生息していないシマフクロウ(絶滅危惧ⅠA類)の繁殖地保全のため、北海道・日高管内の民有地15.8haを購入し、また、9.9haについて土地所有者と協定を結びました。これにより管内3地区※1で合計25.7haを新たに保全することができました。

当会では、会員の方からのご寄付をもとに設置した渡邊基金で購入した土地を「渡邊野鳥保護区シマフクロウ日高第3」(12.1ha)、野鳥保護区基金※2をもとに購入した土地を「野鳥保護区日高第2」(3.7ha)、協定を結んだ土地を「松俊(しょうしゅん)野鳥保護区シマフクロウ日高第1」(5.0ha)、「松俊野鳥保護区シマフクロウ日高第2」(4.9ha)と名づけ、シマフクロウが繁殖する自然環境を恒久的に保全します。

※1:「日高第1」「日高第2」「日高第3」の3地区にはそれぞれ1つがいずつが繁殖している。
※2:野鳥保護区基金:野鳥保護区にかかわる土地購入や管理の費用に特化した当会の基金
注:野鳥保護区や地区の具体的な位置や地名は、シマフクロウの生息かく乱の可能性があることから、公表していません。

1つがいが繁殖する新たな地区に、初めて野鳥保護区を設置

日高第3地区には、2015年から1つがいのシマフクロウの繁殖が確認されています。当会では、このつがいについて環境省や研究者と連携して情報収集を行なってきました。現在、この繁殖地周辺では森林伐採が進んでおり、このつがいの生息が危ぶまれています。そこで、2022年2月に渡邊基金をもとに、繁殖地の一部の12.1ha(121,456㎡)の民有地を購入し、野鳥保護区として保全しました。このつがいが繁殖する地区では初の野鳥保護区です。

渡邊野鳥保護区シマフクロウ日高第3

土地の購入と協定により、1つがいが繁殖する野鳥保護区を拡大

日高第2地区には、2017年から1つがいのシマフクロウの繁殖が確認されていますが、近隣の開発計画にさらされ、このつがいの生息が危ぶまれていました。そこで当会では、法的な保護がされていない民有地を対象として2020年から土地を購入し、野鳥保護区として保全しています。2021年7月には野鳥保護区基金へのご寄付をもとにして、繁殖地の一部の3.7ha(36,425㎡)を追加で購入することができました。そして、2022年2月に4.9ha(49,045㎡)について土地所有者と協定を結び、同地区の保全を強化しました。これにより、2020年度に購入している民有地55.4haと合わせると、同地区のシマフクロウの繁殖地のうち64.0haが保全されます。

野鳥保護区シマフクロウ日高第2

協定により、1つがいが繁殖する森林の保全を強化

日高第1地区には、1998年から1つがいのシマフクロウの繁殖が確認されています。当会では、この地区の河畔林のうち、法的な保護がされていない民有地を、2007年から土地の購入により野鳥保護区として保全してきました。一方で、近隣での森林伐採は続き、このつがいの生息が危ぶまれていました。そこで、当会ではシマフクロウの繁殖地保全を強化するため、2022年2月に土地所有者と協定を結ぶことで、5.0ha(49,987㎡)の野鳥保護区を新たに設置しました。これにより、当会が購入してきた民有地と合わせると、同地区のシマフクロウの繁殖地のうち、151.8haが保全されます。

松俊野鳥保護区シマフクロウ日高第1

シマフクロウについて

河川や湖沼周辺の森林に生息する魚食性の世界最大級のフクロウです。明治期までは北海道内に広く生息していたとされますが、繁殖に必要な直径100cm以上の洞のある大木が森林伐採等により喪失し、餌の魚類が河川改修などにより減少したことで数を減らし、絶滅の危機に瀕しています。現在は北海道中部から東部にかけて約160羽程度が生息するのみです。そして、多くのつがいが巣箱や給餌など、人為的な支援を受けて繁殖しています。生息環境が限られているため、巣立ち後の分散が困難で、近親つがいの形成などの問題も起きています。

日本野鳥の会のシマフクロウ保護事業について

1970~1980年代は企業・行政共に環境への配慮よりも産業や経済が優先される時代であり、開発によって自然環境が荒廃していました。国は環境庁を設置したばかりでまだ十分な体制を持っておらず、生き物たちの絶滅も心配されていました。北海道でも、タンチョウやシマフクロウなど絶滅危惧種の生息地が開発の危機に晒されていました。近年では、大規模な湿原の埋め立てや森林伐採は減ってきていますが、バイオマス発電用材の天然林伐採や太陽光発電所建設など、中小規模の開発により絶滅危惧種の生息地は日々失われています。

伐採されたシマフクロウの森

生息地を丸ごと守ります

絶滅の危機から彼らを守り、進行する開発に迅速に対応するためには、買い取りによる繁殖地の確保がもっとも有効な方法です。そこでNGOである当会が、先駆的に繁殖地を買い取って独自の「野鳥保護区」とする運動を1986年より開始しました(タンチョウ:1987年~、シマフクロウ:2004年~)。

シマフクロウについては、環境省の保護増殖事業者として、繁殖に利用している民有地を買い取って独自の野鳥保護区としているほか、植樹や間伐など森林環境の整備のような長期的な活動と、繁殖期の餌不足や樹洞不足を補う給餌生簀(いけす)や巣箱の設置など、当面の絶滅を回避するための保護活動を行なっています。

野鳥保護区を設置して繁殖地を丸ごと保全することで、 そこに住むすべての動植物を守ることができる。
不足する魚を補う給餌と巣箱の設置

国内最大の民間自然保護区に

最初の保護区設置から今日まで35年が経過し、今回の土地購入により、当会所有および協定による野鳥保護区の総面積は3,662ha となりました(タンチョウ2,463ha、シマフクロウ1,167ha、その他32ha)。また、土地所有者との覚書により保全しているシマフクロウの重要な生息地の132haも合わせると、保全面積は3,794haとなります。これは山手線の内側面積の約6割に相当し、絶滅危惧種の保全を目的とした民間の自然保護区としては国内最大の面積です。(景観保護のための民間自然保護区を含めると、前田一歩園財団の3,892haに次ぐ2番目の広さ)。

村田野鳥保護区風蓮川(別海町) タンチョウが繁殖する湿原を保全している

ご寄付によって支えられています

当会のシマフクロウ保護事業は、活動に共感いただいた方々からのご寄付に支えられています。土地の購入だけでなく、野鳥保護区の設置後には、自然環境を良好かつ永続的に維持するため、巡回監視やモニタリング調査、適正な保全管理など継続的な活動が必要です。これらの活動もご寄付を活用して進めています。
(詳しくはホームページ https://www.wbsj.org/activity/conservation/bird-reserve/

★今回設置・拡大した保護区の景観を、以下のURLから動画でご覧いただくことができます。
【日高1】松俊野鳥保護区シマフクロウ日高第1(https://youtu.be/0ZU8n1bKkrQ
【日高2】野鳥保護区シマフクロウ日高第2(https://youtu.be/tzYYSCFiWms

「日本野鳥の会」について

「野鳥も人も地球のなかま」を合言葉に、野鳥や自然の素晴らしさを伝えながら、自然と人間とが共存する豊かな社会の実現をめざして活動を続けている自然保護団体です。独自の野鳥保護区を設置し、シマフクロウやタンチョウなどの絶滅危惧種の保護活動を行なうほか、野鳥や自然の楽しみ方や知識を普及するため、イベントの企画や出版物の発行などを行なっています。会員・サポーター数は約5万人。野鳥や自然を大切に思う方ならどなたでも会員になれます。

組織概要

組織名公益財団法人 日本野鳥の会
代表者理事長 遠藤孝一
所在地〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
創立1934(昭和9)年3月11日
*創立88年の日本最古にして最大の自然保護団体
URLhttps://www.wbsj.org/
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