帯広から札幌まで、途中特急も利用して片道2,370円で移動してみた

皆さんは「青春18きっぷ」をご存知だろうか。
JR各社の普通・快速列車に限って利用が出来る乗り放題きっぷで、1日あたり2,370円(=1枚11,850円÷5回分)で時間が許す限りどこまでも行けてしまうという、旅人からすると有り難い企画きっぷである。
そのネーミングから「18歳までしか使えないの?」という誤解も受けがちだが、利用期間の春、夏、そして冬には、このきっぷを片手に旅を楽しむ老若男女をよく見かける。

私もこのきっぷには大変お世話になっており、大学時代には利用開始を示す日付印を1枚の18きっぷにJR4社分(北海道、東日本、西日本、四国)集めたこともあるほどのヘビーユーザーである。

photo2201_2
(発売駅が限られている18きっぷ、通称「赤券」。行く先々で集めた駅名の下車印の数だけ旅の思い出がある)

そんな青春18きっぷ、上述したように「JRの普通・快速列車に限って利用が出来る」というのが、利用にあたっての大前提のルールになっている。
しかし、特別な事情によりその限りではない区間が全国に数か所だけ存在し、その1つが身近な札幌-帯広間に存在するのである。

今回は18きっぷを使って途中特急にも乗り、帯広から札幌まで移動してみた。


午前10時01分。

一両編成の滝川行きワンマンカーが、ディーゼル車独特の唸りを上げながら、ゆっくりと帯広駅を出発した。
週末土曜日の中途半端な時間ではあるが席は概ね埋まっており、小さい車体ながら地元民の貴重な足としてこの”汽車”が活躍していることを強く感じさせる。

photo2201_3
まずはこの列車で新得駅まで向かう。

各駅停車の旅、時間はたっぷりある。車内での過ごし方も自由だ。

photo2201_4

遅めの朝ご飯を食べるもよし、読書するもよし、寝るもよし…

photo2201_5

車窓を開けて風を感じながらぼーっと景色を眺めるという過ごし方が、個人的にはオススメである。
空調機能が発達し、その必要性が無くなったことから窓が開かなくなってしまった都会の”電車”では、旅の匂いまで感じることはもはや不可能だろう。旅先の”リアル”をぜひ感じて欲しい。

―――恋は真夏のように愛され眠る
君は悲しみの果てに立ち尽くしていた

photo2201_6
随分と洒落た詩だなぁ〜と関心したのもつかの間、これはGLAYの「とまどい」という曲の歌詞だということをGoogleが教えてくれた。
地元の学生が一時の気の迷いでやってしまったであろう過ちを、そのまま良い思い出(あるいは黒歴史か…)として残しておく寛容さもまた、ローカル線の良いところかもしれない。

そんなことを考えているうちに、列車は新得駅に到着。
ここで下車し、11時42分発の札幌行き特急「スーパーとかち6号」に乗り換える。
18きっぷで特急乗車、すなわちここからが国内でも希少な”特例区間”である。

photo2201_7

何故、青春18きっぷで特急に乗れるの?

答えは簡単。

新得から次の乗り換え駅・新夕張の間には、18きっぷの乗車可能列車である「普通・快速」が一切走っていないから、だ。
その為、特例としてこの両駅間のみで乗車する場合に限り、青春18きっぷでの特急利用が可能になるのである。

photo2201_8
ほぼ直角に背もたれが据え付けられた、お世辞にも快適とは言えない(それがまた良いのだが)ディーゼル車・キハ40から乗り換えると、こちら261系特急車両の快適さと言ったらもう…感動さえしてしまうレベルである。
検札に来た車掌さんに「新夕張まで」と告げ、座席のリクライニングを存分に倒す。
……それからの記憶は、新夕張到着間近にハッと目を覚ますところまで途切れてしまっている。

photo2201_9

幾つもの長大なトンネルを抜け、辿り着いた新夕張駅は、澄み渡る青空と爽やかな日差しで私たちの乗るスーパーとかち6号を出迎えてくれた。
ここで快適な座席に分かれを告げ、再びキハ40でのローカル線旅再開と相成るわけだが、次の発車時刻まで少々時間があるので、駅から徒歩1分の道の駅「夕張メロード」に立ち寄ってみることにした。

「ぶらり途中下車」こそ18きっぷ旅の醍醐味

こうやって気が向いた駅でちょっと改札を出ることが出来るのも、18きっぷ旅の醍醐味であるように思う。

「何か夕張らしいものを…」と選んだのは「焼きドーナツソフト」。

photo2201_10
数種類のしっとり系焼きドーナツから好きな味を選び、その上にバニラor夕張メロンのソフトクリームを乗せてくれるというハイブリッドスイーツ。
今回はメロンドーナツ×夕張メロンソフトというベタな組み合わせをチョイスしたが、これが大正解。
まず何よりも濃厚な果汁感のソフトクリームが美味しく、そして日差しで溶け出したクリームがドーナツに沁みて、メロン風味増大。これがまた美味いのである。
皆さんも近くを通られる際はぜひ。

13時06分、千歳行きの列車に乗って新夕張駅を出発。
ここもまた乗客は多めだが、今度は大きなキャリーバッグを持ち歩く人を何人も見かけた。夕張は今も密かな観光スポットなのだろうか。

列車は途中の追分駅で少し長めの列車待ち合わせをし、14時過ぎに南千歳駅に到着。
ここまで来ると、道外から新千歳空港に降り立った後の経験も手伝ってか、札幌市民的にも「帰ってきた」という実感が湧いてくる。
この駅で15分に1本の快速エアポートに乗り換えたなら、ゴールの札幌駅はもうすぐそこである。


photo2201_11

10時01分に帯広駅を出発し、遅延等が無ければ14時52分に札幌駅に到着。
全区間スーパーとかちに乗車したとしても3時間弱かかるところを、2,370円で4時間50分ほどで行けると考えれば、単純に「移動手段における節約術」として見ても非常に優秀であるように思う。
しかし、青春18きっぷが私たち旅人にもたらす価値はそれだけではない。

「ゆっくり行くから、見えてくるもの」

かつて青春18きっぷのポスターに使われた旅情掻き立てるキャッチコピーであるが、各駅停車のローカル線旅は、新たな発見と刺激に満ち溢れた経験となる。
インターネットで何でも知ることが出来る時代になっても、「百聞は一見にしかず」なのである。

そんな経験を、交通費を節約しながらできるなんて、こんな美味い話があってもよいのだろうか?
自分の最寄り駅から気が向いたところまで、青春18きっぷを握りしめて気ままに旅に出る。
この記事がそのきっかけになれば、筆者としてこれ以上幸いなことはない。


※新得-新夕張間における青春18きっぷ利用乗車の解説&注意
・本きっぷの特急特例区間は、「新得駅」から乗車し、「新夕張駅」で下車するとき(逆も然り)に限り有効になるものです。1.特急にその他駅から乗車or 2.特急をその他駅で下車すると特例区間の適用にはならず、【全区間の正規運賃および特急料金】が必要になります。
例)1.帯広駅からスーパーとかちに乗車し、新夕張駅で降りた
2.新得駅からスーパーとかちに乗車し、新夕張駅で降りずに札幌駅まで乗った
→共に1.帯広駅〜新夕張駅、2.新得駅〜札幌駅の【正規運賃+特急料金】を全額支払う必要があります。
・青春18きっぷによる特急利用で着席可能なのは、自由席だけです。指定席に着席する場合、乗車区間の正規運賃+特急料金+指定席料金が必要になります。また、自由席は着席が保証されているものではありません。
・青春18きっぷの特例区間のルールをご理解された上で、ご利用ください。
・不明な点は駅員さんにお尋ねください。優しく教えてくれます。
・特例適用外の乗り方をして追加の料金支払いが発生した場合でも、筆者およびサツッターは一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。